脂漏性角化症
\ 院長からひと言 /
脂漏性角化症は、「老人性イボ」とも呼ばれ、年齢を重ねるとともに誰にでもできる身近なできものです。そのほとんどは良性で、心配する必要はありません。しかし、顔や首など目立つ場所にできたり、大きくなって邪魔になったり、時には皮膚がんと見分けがつきにくかったりすることがあります。
「これってなんだろう?」と不安に思ったら、自己判断せずに、一度皮膚科を受診して正しく診断してもらうことが大切です。
脂漏性角化症とは?
脂漏性角化症は、表皮の一番外側にある角質を作る細胞が増殖してできる、良性の腫瘍です。
その名の通り、皮脂腺から脂が多く出る場所にできやすいとされていますが、皮脂とは直接関係なく、紫外線や加齢が主な原因と考えられています。
見た目は、茶色から黒色で、表面がザラザラしていて、少し盛り上がっているのが特徴です。
大きさや数は様々で、顔、頭、首、胸、背中など、体のあちこちにできることがあります。
まれに、刺激を受けると炎症を起こして赤くなったり、かゆみが出たりすることもあります。
診断と見分け方
脂漏性角化症は、見た目である程度の判断が可能ですが、中には悪性腫瘍(皮膚がん)との区別が難しいケースもあります。特に、以下のような特徴がある場合は、注意が必要です。
• 色素性基底細胞がん:脂漏性角化症に似ていて、黒っぽい見た目をしていることがあります。
• 悪性黒色腫(メラノーマ):俗に「ホクロのがん」と呼ばれ、脂漏性角化症と間違われやすいことがあります。
自己判断は避け、専門の皮膚科医によるダーモスコピー(特殊な拡大鏡)などを使った精密な診断が不可欠です。
治療法は?
脂漏性角化症は良性のため、基本的には治療の必要はありません。
しかし、見た目が気になる、刺激を受けて炎症を起こす、あるいは悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には、治療を検討します。
治療方法
• 液体窒素による冷凍凝固
• 方法:液体窒素を患部に吹き付け、凍結させることで、腫瘍を壊死させます。
• 特徴:比較的小さな病変に適しており、痛みも少なく、数回の治療で効果が期待できます。
• 炭酸ガスレーザーによる蒸散
• 方法:レーザーを使って腫瘍を削るように除去します。
• 特徴:傷跡が残りにくく、よりきれいに治療したい場合に適しています。
• メスによる切除
• 方法:局所麻酔を行い、メスを使って病変を切り取ります。
• 特徴:悪性腫瘍の可能性が疑われる場合や、病変が大きい場合に行われます。
どのような治療法が適切かは、病変の種類、大きさ、部位、患者さんの希望などを総合的に判断して医師が決定します。
生活で気を付けることは?
脂漏性角化症は、紫外線が主な原因の一つと考えられています。日頃から紫外線対策をしっかり行うことで、新たな病変ができるのを防ぐことにつながります。
• 紫外線対策:日焼け止めを塗ったり、帽子や長袖の衣類を着用したりして、紫外線から肌を守りましょう。
• 刺激を避ける:首や顔にできたものは、衣類やアクセサリーなどの摩擦で刺激を受け、かゆみや炎症を起こすことがあります。できるだけ刺激を避けるようにしましょう。
• 自己処理はNG:自分で無理に取ろうとすると、出血したり、感染したり、跡が残ったりすることがあります。絶対にやめましょう。
