アトピー性皮膚炎
\ 院長からひと言 /
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の病気です。見た目のつらさに加えて、かゆみによる睡眠不足や日常生活の制限など、様々なストレスを抱えてしまいがちです。
決して「治らない病気」ではありません。適切な治療を続けることで、症状をコントロールし、快適な生活を送ることが可能です。
「このかゆみ、どうにかしたい…」と思ったら、一人で悩まずに、迷わず受診してください!
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激やアレルゲンが侵入しやすくなることで、慢性的な炎症と強いかゆみを引き起こす病気です。
「アトピー」という言葉は「奇妙な」「とらえどころのない」という意味で、原因が一つではない複雑な病態を表しています。
遺伝的な要因に加え、アレルギー体質(気管支喘息やアレルギー性鼻炎など)や環境要因(ハウスダスト、ダニ、花粉など)が複合的に関わって発症すると考えられています。
乳幼児期に発症し、成長とともに軽快することが多いですが、成人になっても症状が続く方や、成人になってから発症する方もいます。
診断と症状
アトピー性皮膚炎の診断は、日本皮膚科学会が定めた診断基準に基づいて行われます。
「かゆみ」「特徴的な皮疹と分布」「慢性的・反復性の経過」の3つが主な基準です。
皮疹は左右対称に現れることが多く、顔、首、肘や膝の内側、手足の関節など、皮膚が柔らかい部分にできやすいのが特徴です。
年齢によって皮疹の出方が異なり、乳児期には頭や顔に、幼児期以降は四肢の関節などに現れやすくなります。
また、掻きむしることで皮膚が硬く、ゴワゴワと厚くなる「苔癬化(たいせんか)」という状態になることもあります。
ご自身の判断で市販薬を使用したり、自己流のケアを行ったりすることで、かえって症状が悪化してしまうケースも少なくありません。
適切な診断と治療のためにも、専門の医療機関を受診することが大切です。

乳児期の皮疹

小児期の皮疹

成人期の苔癬化
治療法は?
アトピー性皮膚炎の治療は、主に「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の対策」の3本柱で行われます。
患者さんの年齢や症状の程度、生活環境に合わせて、医師が最適な治療法を提案します。
治療目標は「症状はないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状態です。
薬物療法
炎症とかゆみを抑えるために、主に「塗り薬」を使用します。
ステロイド外用薬は、炎症を強力に抑える効果があり、症状に合わせて強さを選びます。
タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏などの非ステロイド性外用薬も、副作用を考慮して適切に使い分けます。
炎症がひどい場合には、短期的に飲み薬(抗ヒスタミン薬やステロイド)を併用することもあります。
近年では、重症のアトピー性皮膚炎に対し、生物学的製剤やJAK阻害薬(内服薬)による治療も可能となり、より効果的な治療が期待できるようになりました。
スキンケアと悪化因子の対策
正しいスキンケアは、アトピー性皮膚炎の治療において非常に重要です。
石鹸をよく泡立てて優しく洗い、肌を清潔に保つこと、そして保湿剤をこまめに塗って皮膚のバリア機能を補うことが基本です。
ただし、石鹸や保湿剤は刺激となることもあるため、皮膚の状態によっては使用しない方が良い場合もあります。
ハウスダストやダニ、汗、乾燥、ストレスなど、症状を悪化させる要因を特定し、避けることも重要です。
日常生活の工夫によって、症状を安定させ、薬の使用量を減らすことも可能になります。
生活で気を付けることは?
規則正しい生活やバランスの取れた食事、十分な睡眠は、免疫機能を整え、症状を安定させる上で大切です。
また、ストレスはかゆみを増強させることがあるため、自分なりのリフレッシュ方法を見つけることも役立ちます。
掻きむしると、皮膚のバリア機能がさらに壊れて症状が悪化する「掻破(そうは)サイクル」に陥りやすいため、爪を短く切る、冷やすなどして掻かない工夫をしましょう。
